クラシック試験室から 第23回
■暑いです…
クラシック試験室のキタです。
毎日暑い日が続いています。お花の産地である愛知県(名古屋市)の7月最高気温の推移を調べてみましたが、年々気温がじわじわ上昇している傾向を見ると、地球温暖化を実感します。
夏の風物詩である“蝉”についても、気温の上昇に伴い、地上に出てくるのが遅くなる傾向があるようですが、最近では暑すぎて地面が乾燥し(固くなって)地上に出ることなく死んでしまう蝉も増えているのだとか。そういえば、少し蝉の声も減ってきた気がします。
今回も、うれしくなるような話題から入ることはできませんでしたが、いつも通り試験室から様々なお花の試験を通じて、感じたことなどをポツポツと書いてみたいと思います。
■感謝が連鎖する!
まずは、先日(7月16日:再放送8月11日)に放映されたNHKの番組『サンクスonデリバリー』について触れていきたいと思います。(https://www.nhk.jp/p/ts/384XYK7P8X/)
この番組は、“だれかの大切な感謝の気持ちを届ける”ドキュメントバラエティーで、前回の放送は24年11月、日本人が大好きなタコを特集。
その輸入量の約4割を占めるモーリタニアを取材し、日本の食卓を支える良質なタコをとってくれている現地の漁師たちに「ありがとう」を届けるという内容でした。
西アフリカのモーリタニアの漁師たちの過酷な漁の現場に密着し、日本からの感謝を伝えたところ、彼らからも日本への感謝の言葉が返ってきます。その裏には日本伝統のタコ壺漁を伝えた、ある日本人の物語があったという、バラエティでありながらヒューマンドキュメンタリーとしても心に残る番組でした。
今回は、クラシックでも主力商品となっている、コロンビア産カーネーションが取り上げられました。
カーネーションの6割以上を輸入に頼る日本。中でもコロンビアは国内シェアの約4割を占め、日本人の冠婚葬祭などを支えている重要な産地の一つです。
番組では、日本からの「ありがとう」を届けるべく現地の花農家の元へ取材班が訪ねる様子が紹介されました。
そんなコロンビアで出会ったのは生産の最前線を担うシングルマザーたち。
彼女たちは麻薬ビジネスの影響で激化した内戦から逃れて、花農園で働くようになったそうです。
花の生産の裏にある苦難の歴史を紐解くという流れの番組でした。
私たちもなかなか知りえない、現地コロンビアでのヒューマンストーリーをテレビというメディアを通じて知ることができ、改めてクラシックでの仕事にも自信と誇りを持つことのできる内容だったと思います。
クラシックの企業理念は「世界の花と会話し、花を通じて笑顔を届ける」というものです。
私たちの目指したい世界観を表現していただいたような番組だったと感じており、この試験室だよりからも感謝の気持ちをお伝えしたいと思います!
■暑くなると気になること…
冒頭お話ししたように、日本の夏がどんどん暑くなってくると、品質に携わるものとして気になるのが、流通段階で高温による問題が大きくなってくるという事です。
ネットで植物のヒートショックと検索すると「一時的に高温にさらすことで、病害虫に対する抵抗力を高める」といったポジティブな情報も出てきますが、切花の流通において、高温にさらされる時間が長くなると、バクテリアが増加し腐ってしまう確率は高まってきます。
明確な因果関係はよくわかっていない部分が多いのですが、暑い夏こそ適切なクールチェーンを維持することがとても重要になることは間違いありません。
そんなことを考えていると、2024年問題とも相まって国土交通省が提唱する未来型物流インフラ「自動貨物輸送道路(オートフロー・ロード)」構想というものがあることを知りました。
東京〜大阪間(約500 km)を結ぶ専用搬送レーンを整備し、無人搬送車(AGV)や高速コンベヤーベルト的システムを用いて貨物を自動で運ぶ構想で、2027〜28年の実証開始を目指すというもの。
最大3.7兆円という巨大投資になるので、実現するか否かは分かりませんが、慢性的な人手不足や時間的制約、CO₂排出削減の課題にも応え、冷蔵輸送インフラの革新を促すことも期待されるので「世の中考えている人は、すごいこと考えているんだなぁ」と感心するばかりです。
何なら、新幹線を冷蔵庫化して一部物流手段として活用するなんてアイデアはどうかしら…と、素人ながらに発想は拡がっていきます。
■品質の保持について…
唐突ですが、グライダー(紙飛行機)を飛ばすと、自然と揚力が落ちて地面に落ちてしまいますよね。
飛び続けるためには、エンジン(推進力)が必要という事になります。
例えは悪いかもしれませんが、農園との取引も似たような側面があるように思います。
ただ長くお付き合いしているだけで品質状態が良くなっていくことは少なく、むしろ何もしなければ、次第に低下していくという傾向があると感じています。
そこで重要になるのは、マーチャンダイザーの活動です。クラシックでは単なる仕入れ担当(バイヤー)ではなく商品の企画から販売までを幅広く担当するという意味で、マーチャンダイザーと呼んでいます。
マーチャンダイザーは、現地での品質状況の確認や、品質改善策の提案をはじめとした活動に加えて、より良い品質で商品を提供してくれる農園を常に探索するという役割も担っています。
既存農園の商品について品質チェックという点では、試験室も大きな役割を担っているわけですが、マーチャンダイザーから試験室への依頼はその起点となります。
しかし最近、依頼内容を見ていると、正直なところ一抹の不安を覚えることがあります。
というのも、商品や産地の持つ背景、試験の目的、そして特に注意するべきポイント (つまりマーチャンダイザーとしての着眼点)…などの考察が浅い、もしくは欠如している依頼内容が散見されるようになってきているからです。
実際の商品を仕入れるプロの眼としては、品質という課題に対してもっとシビアで、論理的になってほしいと思わざるを得ません。
少し話は変わりますが、最近YouTubeでマーケッターである森岡毅さんの動画を見る機会がありました。
森岡さんが学生の質問に答えるという内容でしたが、「脳に何を覚え込ませるか」が人生の勝ち筋を決めるということで「脳に刻むべき体験」として以下の2つを挙げていました。
「頑張った結果、成功する経験:下図の①」
これは、努力が報われることを脳に覚え込ませ、ポジティブな行動を引き出す原動力になるという事で納得できる説明です。
もう一つは「頑張った結果、失敗する経験:下図の②」で、意外な感じがしましたが、この経験を通じて「次はどのように改善するか」という学びが生まれるという事でした。
一方で、最も避けるべきだと警告したのが「頑張らなくても成功した:下図③」という経験でした。
この経験は、脳に「努力は不要」という誤った認識を刻んでしまう可能性があるという事で、これが続くと、肝心な時に頑張ることができず、大きなチャンスを逃す結果を招くという説明でした。
クラシックの産地は、幸いにして素晴らしい産地が多いので、マーチャンダイザーとして頑張らずとも良い品質が得られていた経験が多いとすると、肝心な時に頑張れなくなってしまうのでは… いやいや、そんなことないようにしっかりマネジメントしていかないとですね。
■お客様に選ばれる商品を提供したい…
マーチャンダイザーの仕事に関わる話が続きますが、品質を管理する立場として感じるのは、「市況が良かったから売れた、悪かったから売れなかった」という説明では不十分だということです。
私たちは事業として花を輸入して販売しているので、常にお客様と競争相手を意識して、クラシックの商品を仕入れていただく市場の方が「お客様に売りたい」「この商品なら値がついて当たり前」と思っていただけるような商品を安定して提供していく必要があります。
若い社員の数も増えてきましたが、各品目を担当するマーチャンダイザーは、その品目の一流専門家を目指してほしいと考えています。
たとえ結果が出なくても頑張り続ける(挑戦し続ける)気持ちを持ち続けていけるように、品質を管理する立場からも支えていきたいと思っています。
■夏の風物詩に戻って…
夏の風物詩として、もう一つ忘れてはならないのが花火ですね。コロナでの抑制が解けて花火大会への人出がニュースにもなりますが、景気の悪化により中止になった花火大会、時間短縮になった花火大会も多くなったような気がします。
最近では花火会場での事故という痛ましいニュースもありました…
花火といえば本当に一瞬の涼を楽しむ、贅沢といえば贅沢な夏の風物詩ですが、無駄を省くという時節柄からすれば、省かれてしまうこともやむを得ないのかもしれませんね。
でも、ある時にスーパーでお花を買う人が「特売で500円分得することができたので、そのお金でお花を買って帰る」とおっしゃる場面を聞いたことがあり、「効率だけではなく、気持ちに余裕のある人がお花を楽しんでくれているんだなぁ…」と妙にほっこりした気持ちになったことを思い出しました。
花のある暮らしッく!
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