CLASSIC スタッフブログ Vol.272
「もう駄目かもしれない」――そう絶望する箱の中の切り花と、空港のトイレに籠城する男。
はるかなる大地から届くお花と男のお腹は、過酷な状況を生き抜いた「土壇場に強すぎる」同志である。
長い旅路を飛行機で揺られてやってくるお花たちの過酷な環境と、空港のトイレで地獄を見る男。日本のみなさんの前で何食わぬ顔でシャキッと咲き誇るお花の生命力と、ギリギリで帳尻を合わせる男…
今回は販売グループよりT.Oが登場です。
■なぜ今なのか?
男子という生き物は、基本的におなかが弱い。
少なくとも僕の観測範囲では、そうなっている。いや、絶対そうなのだ。
よく「男は敷居を跨げば七人の敵あり」などと、昔の人は男気あふれる格好いいことを言ったものですが、あれは絶対に嘘か、もしくはよほどの超人の話に違いない。
僕の背後にいつも気配を感じる七人の敵の内訳は、だいたい「頭痛」と「腹痛」、そして最近しれっと新入生としてメンバーに加わった「老眼」である。敵というか、ただの満身創痍だ。むしろ最近は仲間にすら思えてくる。
なかでも「腹痛」というやつは本当に質(たち)が悪い。
忘れた頃にやってきては、僕の人生の重要な局面をことごとくジャックしていくのである。大事な約束の直前とか、締め切り間際とか、なぜ今なのかという絶妙なタイミングを彼らは見逃さない。しかも恐ろしいことに、我が背後のベンチには、五十肩、腰痛、物忘れ、頻尿、更年期障害といった輩が虎視眈々とレギュラーの座を狙っている。未来のスター選手たちが、いつでも出番を待って身体を温めている状態なのだ。
こんな状態で日々働いている日本のビジネスパーソンというのは、実はものすごい精神力で生きているのではないか、という気がしないでもない。
■世紀末のサイレン
ちなみに、僕のお腹の弱さは年季が入っている。
これまでに救急車には2回乗った。
最初の1回は、忘れもしない1999年の大晦日である。世界中が「ミレニアムだ」「2000年問題だ」と浮き足立つ中、僕は20世紀の終わりにふさわしい見事な胃痙攣(いけいれん)を起こし、サイレンを鳴らして夜の街を激走した。世紀末のカウントダウンを救急車の中で迎える男が、僕のほかに日本に何人いただろうか。あの時のことは今でも脳裏に焼き付いている。
2回目は、疲れが極限まで達して消化器官が完全にストライキを起こした時だ。体が「もう何も通しません。一切の業務を停止します」と頑なになり、そのまま病院へ運ばれる羽目になった。お腹の労働組合の結束力は、我々の想像を遥かに超えて固い。

■海外でこそ輝くお腹の実績
これほど国内で実績を積んでいるのだから、海外へ行けばどうなるかはお察しの通りである。僕の旅の思い出は、常に現地のトイレとセットになっている。
新婚旅行のバリ島では、街で楽しく夕飯を食べた直後、ホテルに戻る道すがら突然のシャットダウン。妻は慌てて滞在中のホテルのスタッフを呼びに行ってくれたが、しばらくして回復した僕は、自力でトボトボと歩いてホテルへ戻った。
ベトナム旅行の時は、いよいよ日本へ帰るというフライトの直前に顔面蒼白で倒れ込んだ。その際、隣にいた妻が「仕方ない。これはもう一泊かな♬」と、なぜか少し嬉しそうな顔をしてホテルを探していたような気がするのだが、あれはきっと腹痛が見せた幻覚だったに違いない。※こういうときの妻の仕事は素早い、そして嬉々としている
さらに別のタイ旅行でバンコクからチェンマイ行きの飛行機に乗ろうとした直前には、これまでにない猛烈な嵐が僕の腹を襲撃した。空港のトイレへ何度となく駆け込み、籠城することになってしまった。この時はまさかチェンマイの美しい寺院を見る前に、空港のトイレで地獄を見ることになるとは思いもしなかった…
この後ギリギリ回復し搭乗しチェンマイに向かったが、妻曰く機内での僕は明鏡止水という言葉を伴った凛とした武士のような佇まいだったらしい。

しかし、不思議なものである。これだけ体が貧相で虚弱の極みにあるというのに、なぜか毎回、フライトの「本当にギリギリの寸前」になると、奇跡的に回復し動けるようになるのだ。※正確にはギリギリ動ける状態にまで無理やりもっていく。
絶体絶命のピンチの後に、なぜか帳尻が合う。どうやら僕の体は、土壇場にだけはやたらと強くできているらしい。
■ビール片手のバカンスか、それともトイレで籠城か。
思えば、僕は毎日扱っている海外からの「切り花」たちにどこか共感してしまう。
赤道直下の国や、はるか遠くの大地から、飛行機に揺られて日本へとやってくる花たち。移動中の箱の中は、彼らにとってさぞや過酷な環境だろう。「もう駄目かもしれない」と箱の中で絶望している花もいるかもしれない。しかし、日本の空港に到着し、彼らは驚異的な生命力でシャキッと帳尻を合わせてくる。そして何食わぬ顔で、日本のみなさんの前で美しく咲き誇るのだ。クラシックの輸入切り花は、僕のお腹と同様、過酷な旅を乗り越えた「土壇場に強い」プロフェッショナルたちなのである。
さて。このブログがみなさまの目に触れているころ、僕はというと、お休みをいただいて妻とタイに旅行に行っている(はずだ)。
微笑みの国タイで、僕のお腹に再び猛烈な嵐が吹き荒れるのか。それともビール片手にのんびり過ごしているのか。僕が無事に日本の土を踏み、オフィスに戻ってこられるかはこの後のお楽しみ、ということにしておきたい。
それでは、また。
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